予防と健康管理レポート

 

 

(1)   はじめに

私は「うつ病」に関するビデオを視聴し、労働環境や生活様式の変化がうつ病の増加につながることがわかり、人間の肉体的・精神的な健康は人間を取り巻く環境に大きな影響を受けると考えた。そこで、私は肉体的・精神的疾患と環境の関連を調査した論文を選んだ。

 

   

(2)   選んだキーワード

“mental health”と、 “lifestyle” というキーワードで検索した。

(3)   選んだ論文の概略

    

表題:「健全なコミュニティ、健全な家庭、健全な人々をつくること:構築された環境と公衆衛生の研究課題を始めること」

     

著者:Shobha Srivasan, Allen Derry, Liam R. O’ Fallon

 

    導入

      論文に挙げられた証拠は、肉体的・精神的疾患が構築された環境(家庭、学校、職場など)に関係することを示唆する。

      予備試験は持続可能なコミュニティの健康上の利益を示すが、構築された環境の中で変化する要因の、健康への影響についてはさらに調査されなければならない。構築された環境の複雑さを考慮し、人間の健康への影響を理解するためには地域密着型の、多層的・学際的アプローチを要する。                                                

      著者は国立環境衛生学研究所(NIEHS)の後援する会議に基づき、より大きな公衆衛生への影響のために、諸機関間の研究同盟を提案する。

   

@      構築された環境

 北アメリカ人の80%が町や都市に住み、屋内で生活時間の90%を費やしている。

 今日まで、構築された環境についての議論が多くなされたが、新しい証拠は私たちの生活や働く場所でさえ私たちの健康に影響することを認める。

 しかしながら、構築された環境によって、逆に有害な健康効果を軽減する仕組みを特定する調査の必要が残る。高確率で発生する慢性疾患(肥満、喘息、心血管疾患、癌など)に関連した、重くなる健康負担と付随する経済的負担はそのような研究努力を付随する。これらの病気は遺伝的、環境的影響の相互作用に起因し、後者の多くは構築された環境に直結しうる。

 研究が構築された環境の否定的な結果に集中するなかで、持続可能なコミュニティの利点の研究課題は必要である。

 

A      定義

1)                                                                                                                          構築された環境

「構築された環境」とは我々の家、学校、職場、公園やレクリエーション域、商業地域、道路を含む。それは頭上では送電線の形で、地下では廃棄物処理場と地下鉄電車の形で、そして高速道路の形で国中に広がる。構築された環境は人によってつくられるか、手を加えられるすべての建造物、空間、製品を含み、それは屋内外の身体的環境、社会的環境に影響を与える。

 

2)                                                                                                                          環境衛生

 最も広義に、「環境衛生」は環境要因によって決定され影響を受ける、人間の健康、疾病、怪我という側面から成る。また、これは身体的、社会的環境の健康への影響、化学製品の病理的影響、工業、農業を含む。

 

B      構築された環境と健康

 構築された環境と健康のつながりの研究は住宅、輸送、地域社会の特性に焦点を合わせ、病気の負担が下層の社会経済層と少数派人口により大きかったと指摘した。

1)                                                                                                                                 住宅

ごく最近、身体的、精神的問題(うつ病、喘息、心臓病、肥満など)が貧弱な都市計画や不充分な住宅といった環境に関わることが認められた。荒廃した住宅は住民を有害動物、大気汚染などの社会的リスクをもたらす。

2)                                                                                                                                 輸送

 ここ数十年に輸送ニーズのために自動車に対する依存が高まり、それは大気を汚染し、肺疾患など人間の健康に悪影響を与える。

 乗り物へのより高度な依存は自動車の増加と密集、歩行者の怪我と死亡を増加させる結果となる。開発中の都市部での歩道や自転車専用道路の不足は、徒歩や自転車で通学する子どもの数を減らす結果となり、子どもの肥満率増加の要因になる可能性がある。

 

3)                                                                                                                                 孤立したコミュニティと座業のライフスタイル

 都市環境の物理的、社会的な構造物はコミュニティの孤立化を促進する。この孤立は社会的なネットワークの欠如と社会的資本の縮小をもたらし、肥満や心血管疾患、精神的疾患、死亡率の増加に寄与するかもしれない。このような孤立したコミュニティに住む人々は、しばしば危機管理や公衆衛生的な試みができない。研究は幼児期と青春期の肥満の減少が長期的な経済効果を与えることを示唆する。

 

4)                                                                                                                                 健康差異

 構築された環境の公衆衛生上の影響を調査する中で、研究は病気の負担が少数民族や低所得層のコミュニティの間でより大きいということを示す。低所得層(とくに黒人や高齢者、障害者、移民)の住宅における、構造や管理の不公正さは、住宅不足、質の悪い住宅、人口の過密、健康問題という結果になる。これらのコミュニティが慢性疾患、精神疾患をより高い確率で経験するかもしれない。

 

C      持続可能なコミュニティ

 1993年の大統領評議会は労働の定義を持続可能なコミュニティに対して「自然の、歴史的な資源が保存され、仕事が手に入り、広がりを含み、近所が固定され、教育は生涯に渡り、輸送やヘルスケアはアクセスしやすく、すべての市民が彼らの生活の質を改善する機会がある、健全なコミュニティ」として提供した。この持続可能なコミュニティの研究は、人間の精神的、身体的な幸福の助けになる自然な環境を作るために苦心した計画が必要であるということを示唆する。この研究は人々が自然環境と接触するとき、健康効果が存在すると主張し、緑の空間の作成と環境的に意識的な建造物の使用を勧める。

 この研究は職場ストレスの減少、無駄なエネルギーの還元による支出の削減から健康的、職業的利益を示す。そしてこのような種類の持続可能なコミュニティが長い目でみればより経済的に健全に移行するかもしれないと主張した。

 

D      挑戦について述べること

 20027月、NIEHSは「構築された環境―健全なコミュニティ、健全な人々、多層的、学際的アプローチ」と呼ばれる議会を召集した。そして彼等は構築された環境と健康の研究実行の方針を調査し議論した。

 研究奨励のための会議からの推薦は以下を含む。

                                                                                                                           持続可能なコミュニティのための効果的処置と指標の開発

                                                                                                                           持続可能なコミュニティの好ましい健康効果の研究実行

                                                                                                                           コミュニティ参加の研究努力の助長

 

E      実施に対する戦略

       20世紀の慢性疾患(心臓病、肥満、喘息その他)は環境に影響を受けることを研究が示しているにもかかわらず、いまだに多くのコミュニティとプランナーは環境要因の健康効果を理解しない。

       環境健康問題を意識しているコミュニティを構築することは行政、コミュニティ、研究者の間で協力と共同、多くの専門に渡る研究アプローチを要する。

 

(4)   考察(選んだ論文、ビデオの内容から)

 先にも触れたが、私は今回、「うつ病」と「アスベスト」に関するビデオを視聴した。その中で特に、メンタルヘルスと環境の関わりに関して興味を持った。

 うつ病患者や自殺者が増加し、現代が「ストレス社会」と呼ばれる背景には、不景気による雇用形態、労働環境の変化が挙げられる。利潤追求のため、企業は効率化を図り、人員を削減したことによって労働者一人一人に課せられるノルマが重くなるという結果になった。また、成果主義の導入により、競争が激しくなり、職場でのコミュニケーションが低下し、労働者はよりストレスをためやすいという環境に置かれている。

 このような環境の中で、働き盛りの30代にうつ病が増加するということは、社会的、経済的に大きな損失である。年間、約3万人が自殺し、死因の第6位を占めている。自殺の直接の原因が経済的、または身体的な健康の理由からであったとしても、自殺を企図する心理状態というのは、広い目で見ればうつ状態であるといえる。

うつ病は「心の風邪」とも呼ばれ、10〜20%の人が生涯に一度はうつ病に罹るというデータもあり、非常にありふれた疾患である。そして早期発見・治療により、うつ病患者の約80%は一年以内にもとの状態まで回復することができる。ところが、適切な治療が行われないとうつ病患者の10人に1人が自殺してしまうという悲惨な結果となる。ほかの疾患と同様に、早期発見・治療が肝要である。

 しかしながら、産業医やカウンセラーなどの専門機関へできる限り早く相談し、職場復帰のためのサポートを受けるということがまだ一般的でないように思われる。

 その背景には、うつ病の初期状態(軽症うつ病)の内に、本人が「自分はうつ病(うつ状態)である」という認識を持ちにくいこと、「気の持ちようでなんとかなるだろう」という「精神論」が働くことが考えられる。また、重い自覚症状が現れたとしても、「自分が休養を取ったら職場に迷惑をかける」、「うつ病に罹るのは自分が弱い人間だからだ。周りに自分がそのような人間だと思われたくない」と周囲の目を気にして治療に踏み出せないうちに症状を悪化させてしまうということが考えられる。そして最悪の場合、自責の念を募らせ「自分などいなくなったほうがよい」と自殺を企図するようになる。

 そのような事態を防ぐために、職場のコミュニケーションを図り、周囲の人間が「今、体調が優れないのではないか」と気づくことのできる環境や、産業医やカウンセラーに早期に相談できる体制をつくることが必要である。同時に、うつ病に関して正しい知識を普及し、個人レベル、企業レベルでうつ病の予防、早期治療に対する意識を高めることも重要である。

 文献を調べると、うつ病のような精神疾患に限らず、身体的な慢性疾患(肥満、心血管疾患、呼吸疾患)も含めて人間の健康問題が環境と深く関わっているということが分かった。

 都市の開発、交通網の整備により私たちの生活は便利になる一方で、大気汚染、過密する住宅環境の悪化、地域社会の孤立という問題点が浮上している。そして、それが直接的に喘息、心血管疾患などの身体疾患として現れたり、劣悪な環境におけるストレスが精神疾患として現れたりしている。

 住宅事情、職場の環境、地域社会全体の環境を改善することにより、健康問題が改善され、経済的効果も得られるということは非常に興味深い。職場に緑化スペースを取り入れるという動きは都市部を中心に最近見られるようになったが、自然環境への配慮だけでなく、人間の健康にも好ましい影響を与えることが期待できると知り、興味がわいた。

NIEHSの提唱するような環境への取り組みが普及し、健全な地域社会の構築が進むことを願う。

 

(5)   まとめ

    わたしたちを取り巻く環境は私たちの健康と密接に関係している。これからは、経済的効率のみならず、健康に配慮した形の都市計画、地域社会の活性化が求められる。それが、健全な地域社会、健全な家庭、健全な人々をつくるのである。

 

参考文献:“Creating  Healthy  Communities,  Healthy  Homes,  Healthy  People:  Intiating  a  Research  Agenda  on  the  Built  Environment  and  Public  Health”  

        Shobha Srivasan, Allen Derry, Liam R. O’ Fallon 著

        

             「うつ病との闘い方」.html